1. 米国の連邦最高裁判所は、U.S. v. O'Hagan事件において、インサイダー取引規制に関するいわゆる「不正流用理論(misappropriation theory)」を正面から認める初めての判決を下した。
2. 不正流用理論とは、適法に取得した情報を個人的利益に転換してはならないという信認義務を他人に対して負う者が、その義務に違反して、その情報に基づく証券の取引をしたときには、証券の売買に関して詐欺を行ったことになるというものである。取引の対象となった証券の発行会社の関係者(典型的なインサイダー)のみならず、内部情報を得た外部者(アウトサイダー)に対しても、広くインサイダー取引規制が及ぼされる。
3. O'Hagan事件は、勤務先の法律事務所が代理人となった株式公開買付に関する内部情報を入手した弁護士が、ターゲットとなる会社の株式を売買して利益を得たというものである。従来の判例理論では、この弁護士と株式を取引したターゲット会社の株主との間には信認関係が存在しないため、インサイダー取引とならない可能性があった。
4. 下級審では否定する例も現れていた不正流用理論が最高裁によって認められたことで、今後SECはインサイダー取引の摘発を積極化することが予想される。
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