1. ナット・ウェストは、トレーダーによるオプションのプライシングに関する不正事件をきっかけに、投資銀行業務でグローバル・トップ・テンを目指すという戦略の見直しを迫られている。
2. ナット・ウェストは、95年以降、英米のM&A専門ブティック証券会社や米国の債券プライマリー・ディーラー、英国のファンド・マネジメント会社を相次いで買収し、証券業務の強化を図ると同時に、リテール業務を中心とする商業銀行業務の合理化を進めてきた。
3. しかし、これまでの所、証券業務部門強化の成果は限られている。リテールに特化する戦略を採用したロイズTSBの業績がよいこともあり、証券業務に注力してきたナット・ウェストへの批判が高まっているのである。したがって、今回発覚した不正事件だけが、戦略見直しを迫られている原因であるわけではない。
4. 今回の戦略見直し要求が、リテール業務の環境がよいという短期的な要因によって、必要以上に強いものとなっていることは否定できない。英国で、証券業務の強化を最も積極的に行ってきたナット・ウェストが、その戦略を貫くことができるかが注目される。また、スイスやドイツでは大手銀行の戦略が似通っているのに対し、英国の4大銀行は戦略も多様である。どの銀行のどのような戦略が成功を収めるかも興味深い。
|