1. 米国では、1月29日、連邦預金保険公社(FDIC)の主催で、預金保険に関するコンファランスが開催された。このコンファランスでは、最近公表されている預金保険の民営化案などが焦点の一つとなった。
2. 預金保険制度を巡る議論が活発化している背景には、1)金融サービス業の多様化、融合が進むなかで、連邦預金保険の対象となっているという理由で、自由な業務展開を行えない銀行業界の不満の高まり、2)銀行の巨大化により、預金保険の抱える潜在的リスクが高まっていることなどが挙げられる。
3. 米国の預金保険を巡る議論は、公的セーフティネットである預金保険制度がもたらす弊害(モラル・ハザード)と、これに伴う納税者の負担コストの問題に焦点が当てられている。
4. 一方、我が国では、銀行の業務範囲規制が緩和されると同時に、金融システム不安の問題に対処するため、預金保険制度が強化される方向にある。我が国では、預金保険のもたらすモラル・ハザードの危険性に着目した議論がなされておらず、米国での一連の議論は、今後の我が国の預金保険制度を考える上でも、参考になろう。
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