1. 米国では、証券会社は、顧客の代理人として、顧客の注文に関する最良執行(best execution)を確保する義務を負っているものと理解されている。しかし、最良執行義務の具体的内容は、(1)第三市場やPTSの成長など取引執行の場の多様化、(2)ペイメント・フォー・オーダーフローの一般化、(3)プリファレンシングや店内化といった取引慣行の登場、といった状況の下で、必ずしも明確でないのが実状である。
2. こうした中で、Nasdaq市場のマーケット・メーカーが、最良執行義務に反して顧客注文を執行したとする集団訴訟が提起された。一審では、証券会社の主張が認められたが、去る1月30日の控訴審判決では、業界の慣行として認められてきたNasdaq取引端末上における最良気配(NBBO)での執行では不十分だとする原告側の主張が容認された。
3. 今回の判決が対象とした期間は、97年1月に施行された注文執行義務ルール導入以前であり、現在の取引慣行に直ちに影響を及ぼすものではない。とはいえ、最良執行義務の不明確さや最良執行確保の難しさを浮き彫りにした。
4. 我が国においても、今後、自由化の進展とともに最良執行に対する関心が高まっていくことが予想される。
|