1. 英国では協同組織の金融機関であるビルディング・ソサイエティが相次いで銀行に転換している。10月1日にノーザン・ロックが転換し、94年末時点での大手10社のうち、実に7社が銀行に転換したことになる。
2. ビルディング・ソサイエティは、個人からの預金受入と住宅購入資金の貸付を主要な業務としている。18世紀には最初のビルディング・ソサイエティが設立されており、その歴史は古い。これまで、合併により再編が進み、1社の平均資産残高は30億ポンド(約6,000億円)に達する。ただ、大小の格差は大きく、一連の銀行転換前の上位10社で業界全体の総資産の約8割を占める。
3. ビルディング・ソサイエティの銀行転換の要因は、銀行との競争激化である。ビルディング・ソサイエティには業務範囲や資金調達手段に一定の制約があり、経営上の自由度を高めるには銀行転換が不可欠との判断があった。
4. ただ、協同組織の強みを活かし、銀行よりも有利な金利を提示し、効率的な経営を行うことによって、ビルディング・ソサイエティとして存続する戦略を選ぶ大手もある。
5. ビルディング・ソサイエティを取り巻く環境は、わが国の協同組織金融機関を待ち受ける環境に類似していると考えられる。その将来を占う上でも各ビルディング・ソサイエティの戦略と成果が注目される。
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