1. シンガポールの金融セクター改革は、金融通貨庁(MAS)のリーダーシップ、世界的な市場間競争の進展を背景に、1997年終盤から活発化している。1998年2月に発表された金融セクター再検討策(Financial Sector Review)が、業態別の改革方向を示している。
2. 証券市場については、最近1年程度の間にデリバティブ市場の商品多様化、取引所合併構想、債券市場の育成、資産運用産業の育成など、さまざまな施策が実施された。ただし、隣国マレーシアの資本規制導入などの影響もあり、投資家ベース、取引高、資産規模の拡大という狙いどおりには効果がでていない状況である。
3. 1999年5月には、商業銀行への外資開放と地場銀行の再編を核とする、銀行自由化プログラムが発表された。
4. シンガポールは「内外分離型」の国際金融センターとして発展してきたが、銀行自由化プログラムの発表により、事実上大きく方向転換したといえる。改革の成り行きについては、香港との競争(改革のインセンティブ)、アジア金融危機の影響(マレーシアとの関係、ASEANにおける不良債権問題)を考えておく必要があろう。
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