1. 99年5月4日、米国大手投資銀行のゴールドマン・サックスが、株式公開を果たした。その規模もさることながら、大手で唯一、パートナーシップ形態の存続を堅持してきた同社が組織変更に踏み切ったことは、一時代の終わりを象徴するものとして、注目を浴びた。
2. 同社が米国の有力な投資銀行として成長していく上で、パートナーシップ形態が果たした役割は大きかった。パートナーとなる魅力が優秀な人材を引き付け、部門や個人を超えて、組織全体の利益を優先する企業文化を育んだからである。しかし90年代に入り、他業態や欧州金融機関、電子取引業者などとの競争に晒されていく中で、非パートナーに対する処遇の不十分さや自己資本拡大の制約など、その弊害も目立つようになっていた。
3. 同社公開の狙いは、(1)資本力の強化、(2)利益のより広範な分配、(3)買収資金の調達、である。ただし、公開後もワンストップ・ショッピングやマス・リテール業務への参入を目指すよりもむしろ、(1)投資銀行、(2)トレーディング、(3)資産運用の3業務を中核としていくことを表明している。
|