1. 米国において、資本市場における不動産ファイナンスの証券化が定着しつつある。エクイティ型証券化市場を牽引したのが不動産投資信託(Real Estate Investment Trusts;以下REIT)である。REIT市場での資金調達は、1993-94年のIPOブームを契機に急速に拡大し、1999年には時価総額1450億ドルを突破した。
2. REITは、(1)流動性、(2)安全性、(3)マネジメント及びガバナンスの点で優れた特性を持ち、機関投資家に新たな運用機会を提供した。また、不動産業に対しては、資本市場へのアクセス、資金調達のフレキシビリティを提供する。
3. REIT市場が拡大した理由は、第一に1990年前後から起こった不動産不況とクレジットクランチによって、従来リミテッド・パートナーシップ(LP)によって非公開市場から資金調達を行っていた不動産業者が、エクイティによる銀行融資のリファイナンスを迫られたためである。第二に、UPREITスキームの開発によってLPからREITへの転換、REITによる商業不動産の買収が容易になったことがあげられる。
4. 米国REITインデックスは、1998年には下落したが、成長性分析手法の開発、投資家の理解の深化によって、市場における位置づけを確立しつつあり安定期に入ったとみられる。
5. 我が国では、不動産ファイナンス全体の歴史や仕組みが、米国とかなり異なっている。日本型REIT導入の是非や影響を検討する際に、米国市場の現実を十分に理解することが不可欠である。
|