1. 米国では、1975年5月の手数料自由化によって機関投資家取引における売買委託手数料は証券業者と投資家の間での交渉によって決められるようになった。手数料がリサーチなどのサービス提供の対価(ソフト・ダラー)を含む合理的な水準であれば、最良執行義務(受託者責任)に反していないと解されている。
2. 投資顧問業者など運用機関では、こうしたソフト・ダラー協定の内容を開示するとともにソフト・ダラー利用の厳格な社内管理手続きを設けている。
3. 証券取引委員会(SEC)は、ソフト・ダラーの実態調査と一斉検査を踏まえ、ソフト・ダラーの不正利用に対する新たな規制・摘発に乗り出した。関連諸団体も相次いでソフト・ダラーに関する基準や対応策を打ち出している。
4. 我が国でも、取引所集中義務の撤廃と売買委託手数料の完全自由化により、投資家がその取引執行ニーズにあった手数料および発注先市場を選択することが可能となるうえ、受託者責任の観点から、年金スポンサーからの最良執行要請も高まっている。証券会社による証券売買に伴うリサーチの提供に対して、ハード・ダラーで支払うか、ソフト・ダラー協定を締結して開示するか、合理的な理由を明確にして選択する必要があろう。
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