1. 銀行は、BIS自己資本比率規制対策を誘因として、貸付債権流動化に積極的に取り組んできた。一方、1998年に入って、米国の不良債権処理手法であるバルクセールに注目が集まり、不良債権処理の促進が期待されている。
2. バルクセールの導入は、旧来の流動化手法では困難であった不良債権の最終処理を加速させる他、その基礎概念である派生投資価値(DIV : Derived Investment Value)や適正価格評価手続(Due Diligence)を通じて貸付債権や担保不動産の価格決定に市場性を付与することとなる。旧来の相対型流動化市場から証券化市場への過渡期において、我が国での定着が期待されている。
3. しかし、不良債権処理の観点から証券化を促進していくには困難さがつきまとう。不良債権証券化の成否は資金回収行動の強弱に依るからである。不良債権処理が銀行の資本力に依存せざるを得ない以上、任意売却やリストラ効果を勘案したバランスある運用とともに一層の市場整備が必要であろう。
4. 銀行による証券化への注力には、ポスト不良債権処理における銀行像をみることもできよう。証券化の議論は、不良債権処理の側面から強調されながらも、資本市場のプレイヤーに確実に変化をもたらしつつある。
|