1. 99年初より順調にスタートを切った通貨統合により、EUの金融・資本市場の統合が一層進むことが期待される。証券取引所や派生商品取引所の統合や提携に向けた動きのように、統合に向かう動きが見られる一方で、金融・資本市場の統合の促進には課題も多い。EU委員会は欧州理事会からの指示に基づき、残された課題を整理した報告書を98年10月末に発表した。
2. 報告書の内容は、(1)法制度、(2)ホールセール市場、(3)リテール市場、(4)金融機関監督、(5)市場統合のためのインフラ、の5章に分かれている。法制度のスリム化、効率化が提唱されているほか、国境を越えて金融サービスが提供されるようになったときの消費者保護や、各国監督機関間の協調の重要性が指摘されている。また、長期的には金融商品に関する税制の調和なども求められている。
3. EU委員会は、金融サービス政策グループを設置し、報告書で指摘した課題の解決を図る。99年6月までには、最も優先すべき課題について行動計画を欧州理事会に提出する予定である。EUの金融・資本市場は着実に拡大、多様化している。市場の統合が今後どのように進み、EUの発展にどのような影響を与えるか、今後が注目される。
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