1. 米国では、オンライン証券取引が急成長を遂げた一方で、大手証券会社では営業マンの引抜き合戦が過熱気味となっている。一見相反するこの現象の背景には、インターネットが証券人口の裾野を広げた反面、新興富裕層セグメントの成長に大きく貢献したことがある。より洗練された金融サービスを求める新興富裕層のニーズに応えられる営業マンの需要は、従来以上に高まっている。
2. 資産管理型営業を標榜してきた大手証券会社の営業マンも、オンライン取引との差別化を図る意味合いもあり、富裕層・中小企業オーナーに特化する姿勢を、より鮮明にしている。中でもメリル・リンチは、90年代中頃から、資産・負債の総合管理及びその継承まで関わるALT戦略を掲げ、プライベート・バンキングとの競合も視野に入れつつ、富裕層向けの品揃えを充実させてきた。例えば同社は投資信託では飽き足らない顧客向けに、系列運用会社の分離勘定口座(セパレート・アカウント)を積極的に提供している。また過去数年、競合他社も貸付・信託・保険や中小企業向けサービスを強化し始めたことは、ALT戦略の有効性を裏付けていよう。
3. 業態の異なる金融機関を並列させる金融コングロマリット型総合金融機関と異なり、大手証券会社では、営業マンが包括的金融サービスの要となっている。そのため、優秀な人材にはより厚く報いるとともに、報酬制度に経営方針を反映させるべく、機動的な調整を行っている。
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