1. 2000年4月4日、米大手生保メットライフは、相互会社から株式会社に転換、翌5日にニューヨーク証券取引所(NYSE)に株式を上場した。同社公開への市場の期待は大きく、上場後初の公表決算になる2000年第2四半期も好調だったが、上場後半年間のメット株への市場の評価は比較的冷ややかだった。
2. その理由として、1)長く続いた官僚主義的なイメージの払拭にはなお時間がかかる、2)1970年代からの無計画な多角化がもたらした非効率経営の是正、コスト削減の余地があること、などがある。だが、保険アナリストなどが特に問題視したのは、同社が総合化戦略を前面に出しすぎ、主力事業や将来の展望がぼやけてしまったことである。
3. 1998年11月に株式会社化・上場した中堅生保のMONYは、株式会社化に先立ちゴールドマン・サックスの出資を受けることで市場の信任を得るとともに、法務部門の拡充など円滑な事務に向けた周到な準備を行い、アナリストからの評価を高めた
4. 米国では、保険会社が市場の評価を勝ち得るには、経営戦略とその進め方を明確に示すとともに、強い自己主張と企業アイデンティティを持つことが重要である。
5. わが国保険会社が組織変更や市場デビューを検討するとすれば、検討段階から将来の事業戦略やアイデンティティを明確にし、積極的に消費者、契約者、そして株式市場にアピールすることが肝要となる。
|