1. わが国機関投資家の上場会社の持株比率は、上場会社間の株式持合の解消とともに相対的に上昇している。企業の不祥事や突然の経営破たんなどわが国企業のコーポレート・ガバナンスが問われる一方、機関投資家の株主行動にも関心が高まっている。特に、年金資産を受託する運用機関は、受託者責任を果たす観点から、議決権行使を適切に行うことは顧客の利益向上につながるという考え方が広がっている。
2. 議決権行使に対する体制や考え方など、運用機関20社に対して個別インタビューを行ったところ、この1、2年で議決権行使のための社内体制が整備され、実際の議決権行使の判断においても、詳細な基準に基づき、会社提案に対して反対・棄権をすることも珍しくないことが確認できた。他方、議決権行使に関する制度的・物理的制約は大きく、保有したまま長期的なリターンを追求するよりも、目先の信用リスク回避から売却して株価によるプレッシャーを与える手法がとられがちである。
3. 米国ではインターネット等を通じた議決権行使の体制が急速に拡大し、英国でも99年に始動している。E(エレクトロニック)ボーティングの導入は、フランス・ドイツなどでも容認する法改正が本格化しており、まさに世界的な潮流である。
4. 今後、わが国機関投資家の株主行動への期待は高まるとみられるが、その発展には、年金スポンサーの議決権行使に対する考え方の表明と長期的株主価値の向上への理解を深め、Eボーティングの導入など議決権行使の制度的・技術的インフラ整備が急がれなければなるまい。
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