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資本市場クォータリー 2000年春号
JP.モルガンの新たな戦略
─e-ファイナンス・ファームへの変貌─
飯村 慎一
要約
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1. JP.モルガンが2000年3月、新たな戦略として電子金融取引部門「LabMorgan」を立ち上げた。大手行が電子商取引分野への参入を積極化させるなかで、e-ファイナンス市場というニッチな市場に注目してJP.モルガンのブランドを活かす考えである。

2. 1990年代後半の金融再編期においても独自路線を貫き、マーチャント・バンクとしての伝統と革新の融合を上手に果たしてきたとはいえ、大規模化した金融機関を前にして、金融業界におけるポジショニングが問われ始めているのも事実である。

3. そうしたなか、LabMorganは、リスク管理、デリバティブ・サービス、電子債券トレーディング・サービスなどに投資・育成を行う金融ベンチャー企業へのインキュベーターとして立ち上げられた。こうして、JP.モルガンは新たな成長と金融サービス業像を目指して、電子金融取引市場への重要な足がかりを得たのである。

4. しかし、LabMorganの真の狙いは、有望な金融ベンチャー企業の囲い込みとベンチャーキャピタル投資による利益追求であり、電子金融取引市場へのJP.モルガン・ブランドの拡大に他ならないのである。その意味では、卓越した金融ノウハウとマーチャント・バンクとしての性格を持つからこそ可能となるビジネス・モデルである。

5. 新たなビジネス・モデルを構築しつつあるJP.モルガンに対し市場の評価も好意的だが、米国株式市場や米国経済への警戒感が強まるなか、新たな戦略がどこまで奏功するかは未知数ではある。しかし、学ぶべきは「自身の強みを見極め、それを伸ばし、さらにブランドに変える」という戦略の一貫性と実行力ということなのであろう。

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