1. 2000年6月、NYSE、東証など世界の10取引所が、「投資家に自国の取引所を通じて世界主要市場へのアクセスを提供する」ことをめざす「グローバル・エクイティ・マーケット(GEM)構想」の実現へ向けての協議を開始した。
2. GEM構想が提示されたことで、NYSE、東証等とナスダック市場がグローバルなネットワーク形成をめぐって競い合うという市場間競争の構図が浮かび上がってきたとみることもできる。ナスダック市場は、大阪証券取引所と提携してナスダック・ジャパン市場を開設する一方、ドイツ取引所とロンドン証券取引所が合併して設立する新取引所iXのベンチャー企業部門へ出資することを明らかにしている。
3. 市場間リンクには、(1)市場間の合併、(2)取引システムの共通化、(3)上場銘柄の共通化、(4)注文回送ネットワークの形成、(5)情報ネットワークの整備、といった様々な方法がある。過去には、経済統合の進む欧州で多くの市場間リンク構想が進められたが、最近では、グローバルな市場間競争の激化を背景に、世界的に市場間リンクが注目されるようになっている。
4. グローバルな注文回送ネットワークの形成というGEM構想の狙いが実現すれば、海外市場への注文回送のコストは低下する。しかし、それだけで実際の売買が増加するかどうかは不透明である。市場参加者や投資家は、市場間の合従連衡の動きにいたずらに目を奪われることなく、取引の効率化が実際に達成されているのかどうかを冷静に見極める必要があろう。
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