1. 90年代以降、我が国における企業年金基金の運用規制は大きく緩和されてきた。さらに、金融ビッグバンにより、年金資産は規制による画一的運用から効率的な運用に委ねられ、資産運用業界はめざましく発展している。
2. こうした運用規制の緩和とともに基金理事および運用機関の裁量が拡大するにつれ、運用の結果に対する責任もまた重くなっていることについては十分に認識されているとは言い難い状況にある。
3. 我が国では、米国ERISAに規定されるような年金運用者の受託者責任規定が存在せず、運用機関の各業法および各年金運用契約によって責任が異なっている中で、厚生年金基金連合会では、基金理事による運用のモニタリングという観点から、受託者責任研究会を開き、運用機関の受託者責任を1年に渡って議論した。その結果、4月17日に、運用プロセスに従い43の項目について、運用機関として行うことが不適切な事項および望ましい事項、基金理事としてチェックすべき事項を例示する「運用機関の受託者責任」実務マニュアルがまとめられた。
4. 「運用機関の受託者責任」実務マニュアルには法的強制力はないが、運用に関する包括的な検討を行われた初の成果であり、未だ過渡期にある年金運用の世界において、具体的な行為基準の先鞭をつけたものと評価できる。今後の運用責任に関わる問題について、今通常国会に上程されている確定拠出年金法、金融商品販売法に加え、今後立法予定にある企業年金法においても十分参考とされよう。
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