1. 証券市場を活性化し、市場機能を通じた資源配分を実現する直接金融機能の強化を図るためには、証券取引をめぐる税制の見直しが必要不可欠である。見直しにあたっては、短期的な市場対策として証券投資を優遇するのではなく、税法の全体系の中に証券投資に伴うリスク・テイクという行為が、それに見合ったリターンで報いられるような仕組みを正しく位置づけることが求められる。
2. 証券取引から生ずる所得を含む金融所得の位置づけに関しては、従来、総合課税を理想とする包括所得税論の考え方が一般的であった。しかし、徴税の強化を図れば容易に国外へ流出する「足の速い」所得である金融所得の取り扱いについては、むしろ、勤労所得から分離し、比例税率(累進性のないフラット・レート)で課税するという二元的所得税の考え方が適切である。この基本的な視座に基づきながら、個人所得税制を中心に個々の論点を検討した。
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