1. バーゼル銀行監督委員会を中心とする共同ワーキング・グループ(MWG)がリスク情報の開示のあり方について具体的な提言を行い、新BIS規制市中協議案で示された「第三の柱」の論議に具体的な材料を与えることとなった。
2. MWGの視点は、(1)定性・定量の双方にバランスのとれたリスク情報開示の重要性、(2)金融機関のリスク管理手法との整合性の必要性、(3)リスク・プロファイルの的確な把握のための詳細情報の必要性と、「第三の柱」の方向観と整合的である。
3. しかし、提言に対し民間金融機関は批判的である。開示されるべき情報の細かさに加え、国際金融監督当局がこれまでの「自発的」な情報開示のあり方の流れを無視し、一律の規制を強いているように受けとめられているからである。
4. もっとも、内外金融機関のリスク開示状況を分析すると、独自の創意工夫が見られる一方、定性情報に偏り気味で、投資家にとって有用な定量情報が得られていない状況も見られる。米国での調査では、投資家にとって有用なリスク情報とは何かという問いかけがなされ、定量情報の質が重視されつつある。
5. 会計制度の改善が進む我が国においても、旧来の健全性規制の下での金融監督当局のためのリスク情報開示から脱し、投資家にとっての有用な情報とは何かに注目し、市場規律を活用していくための開示環境を作っていくことが期待される。
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