1. 1990年代、老後貯蓄市場の拡大と好調な株式市場を背景に、米国では生命保険会社の変額年金ビジネスが急拡大した。金融サービス全体で退職貯蓄資金の取り込みを目的とする競争が激化する中、生保各社は、年金特有の死亡保障や受取年金額の保証を多様化させたり、銀行や証券会社などに販売チャネルを拡大する戦略をとった。
2. 株式市場の低迷とともに保障部分の債務が顕在化し、十分なヘッジを手当てしていなかった会社や、保障に対して積極的な価格設定(手数料)を行っていた会社などでは引当金や準備金の積み増しが必要となり、収益を大きく圧迫する状況も出ている。投資家は、付加される保障が充実されるにつれて、変額年金では切り離されていると思っていた保険会社のビジネス・リスクを大きく負う結果となっている。
3. 競争激化と株式市場の低迷により、変額年金への新規資金の流入は減少を続けている。こうした中、過剰な乗り換えを勧誘するという法令違反も増加している。
4. わが国の変額年金市場は歴史も浅くまだ規模も小さいが、2002年10月からは銀行による窓口販売も開始され、個人貯蓄の多様化、投資信託を利用した証券投資の普及を促すものとして今後の成長が期待されている。先進する米国で生じている問題を参考とした健全な市場の発展を期待したい。
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