1. 不良債権の拡大、WTCテロ事件の影響、エンロン問題の影響を受けて大手銀行の株価が低迷するなか、米国の中堅銀行に注目が集まっている。例えば、コマース・バンコープ、TCFファイナンシャル、フィフスサード・バンコープは、顧客サービスの徹底ぶり、利のあるビジネス・モデルへの大胆な特化、財務の健全性等に定評があり、米国の銀行アナリストの間でも評価が高い。
2. 他にも、独自の戦略で大手銀行と戦っている中堅銀行があり、米国の銀行産業が一握りの大手銀行で占められていくかどうかは議論のあるところだろう。当局の競争政策のあり方や米国銀行産業が「多産多死」型であることを踏まえれば、今後も、独自の工夫で躍進する中堅銀行が生まれてくる余地が残されている。
3. もっとも、高まる競争の中で、顧客に選ばれる銀行となることが重要である。本稿の事例からは、(1)消費者への心理的なアピールが強いか、(2)銀行が提供する商品とサービスが優れているか、(3)銀行のビジョンやリーダー・シップが共感できるものか、(4)財務の健全性が高いか等がポイントであることがわかる。
4. その意味では、顧客サービスの在り方により深く取り組む銀行が現れ、旧来の銀行サービスを変えようとする銀行が消費者から選ばれていくという動きがあることは、銀行産業もまたサービス・エコノミーの流れにもはや抗しきれないということなのであろう。
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