1. 米国で、証券会社のアナリストが、投資評価の中立性よりも、自分の所属する証券会社の投資銀行部門、発行企業、あるいは自己の利益を優先しているのではないかということが、社会的に大きな問題として注目されている。
2. 実際のケースとしては、ニューヨーク州司法当局が、大手証券会社メリルリンチのアナリストの投資評価が投資銀行部門の業績を上げるために不当に歪められていてニューヨーク州法違反の疑いがあると指摘したが、2002年5月21日、メリルリンチが利益相反を防止する措置を講じることに合意して和解が成立した。
3. 一方、全米証券業協会(NASD)とニューヨーク証券取引所が共同でアナリストの利益相反の防止規則を制定し、7月9日に施行された。証券会社に対し、IPO等の引受幹事を務める場合にIPO後のアナリスト・レポート発行禁止期間を定め、レーティングの分布状況と過去の推移や、調査対象となる企業と投資銀行部門との取引関係の開示を義務付けている点が特徴的である。
4. アナリストの中立性問題は、(1)証券会社のチャイニーズ・ウォールの強化、(2)アナリストの報酬体系の見直し、(3)利益相反の可能性の投資家への開示という方向で解決しようとされている。しかし、ニューヨーク州司法当局が規制の強化を推し進めており、引き続き、その動向が注目される。
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