1. 2001年9月に上場取引が開始された不動産投資信託(J-REIT)は、高い分配金利回りを背景に時価総額を増やしているが、投資家層の多様化・拡大が急務である。一方、わが国の機関投資家においては、運用規制や過去の直接不動産投資に係る損失などから、長らく不動産関連投資が敬遠されてきた状況で、不動産証券化商品に関する理解もあまり進展していない。
2. 欧米の年金基金においては、不動産を株式・債券に次ぐアセットクラスと認識して長期投資の対象としているほか、REITなど上場取引される不動産証券化商品も活用して分散効果、効率性の向上を狙っている。
3. J-REITについても、公募・上場取引がなされていることによる透明性や流動性が大きなメリットとなる。また、わが国においては、直接投資に不安感があり、商業不動産の価格が高く分散化した不動産ポートフォリオを保有しにくい現状がある中で、J-REITが「コア不動産」へのアクセスを機関投資家に提供できるツールとなる可能性があろう。指摘される課題は、J-REITの認知度が低く取引データの蓄積も少ないことに起因する事柄が多い。証券の性質と適格性に対して、一種の不安感・不信感があるため、これを払拭するための経験と関係者の努力が必要である。
|