1. 米国企業では、1990年代に活発化した自社株買いに際し、個別株オプションなどを利用することが多い。代表的な手法が、自社株を対象としたプットオプション(自社株プットオプション)を企業が売却する方法である。財務諸表上、プットオプションの売却を開示する場合には、プットワラントと呼ぶことも多い。
2. 自社株プットオプションの売却は、会社にとっては(経営陣から株式市場への)シグナリング効果が期待できること、オプションプレミアム収入が無税のキャッシュフローとなることなどがメリットとなる。一方、株価が行使価格を上回って下落する場合には、保証した価格での買取りを迫られ損失を被ることもありえる。
3. 米国企業の自社株プットオプションの活用実態については、網羅的な統計・調査がないが、徐々に事例分析や実証研究が公表されるようになっている。プット売却の規模やタイミングを誤ってメリットを得られなかった企業の例もある一方で、キャッシュフロー上のメリットを得た企業や、従業員持株プランに活用している例、プット売却後の財務パフォーマンス向上を示す実証研究なども現れている。
4. わが国においても、株価低迷、株式持合いの解消、金庫株の活用といった、資本政策に関わる課題を持つ企業にとって、自社株プットオプションが有効な方策として検討される可能性がある。
|