1. ニューヨーク証券取引所(NYSE)のリチャード・グラッソー前会長に対する高額報酬問題を契機に、NYSEのガバナンスを見直すべきとの意見が広がっている。
2. NYSEが上場企業にコーポレート・ガバナンスの強化を求めていたこと、会員の収益環境が悪化していたこと、証券取引委員会(SEC)がNYSEのガバナンスや規制機能について検証しようとしていたことなどが、NYSEに対する批判が強まっていった背景にある。
3. 前会長への報酬は、市場規制機関の役員としては桁外れに大きいものであった。また前会長が理事会の人事・報酬委員会に対して強い影響力を持っていたことや、全ての理事に情報が十分に示されていなかったことなどが、ガバナンス上の問題とされている。
4. NYSE自身も、2月に発足した「NYSEのガバナンスに関する特別委員会」での検討を通じて、改革に取り組み始めていた。6月の第一次報告書では、人事・報酬委員会のメンバーから証券業界の代表者を排除すること、監査委員会の独立などが提言され、一部はすでに実施されている。
5. 今後は、暫定会長に就任したジョン・リード氏(シティグループ前会長)を中心にさらなる改革案が議論される見込みである。理事会の構成、理事改選プロセスにおける透明性の確保、自主規制機能の取扱いなども論点となることが予想される。
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