1. 2002年の資産運用会社のM&Aは、取引額こそ減少したものの件数ベースではここ数年の水準を維持しており、引続き活発に行われた一年であったといえる。大規模案件をみると、(1)欧州金融機関の米国進出、および(2)特定市場内での再編、という二種類の傾向が観察される。
2. 欧州金融機関の米国進出の各事例に共通する要素は、優秀な特化型商品の品揃えを図っていることである。おそらくは事業運営上の配慮から、被買収運用会社には従来と変わらない運用体制や業務上の裁量が認められている。反面、効率性追求は犠牲となっている側面がある。
3. 一方、特定の市場内で完結した運用会社の再編は、主として規模の経済を目指すものである。運用体制や商品の迅速な統合等を通じてコスト削減を目指すが、顧客基盤の性質によっては、既存契約の流出という副作用も生じている。
4. 日本においても特化型運用が発達しつつあるが、将来に対する示唆として、(1)M&Aに際して効率性向上と顧客期待の維持との両立が困難を伴う、(2)運用会社を経営する資本として傘下に複数の特化型運用機能を揃える動機が生じる、(3)長期インセンティブの付与が重要になる、の三点を確認することができる。
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