1. 我が国では、証券会社が中小企業に提供するサービスは、株式の新規公開かオーナーの個人金融資産運用位と考えられている。これに対して米国の証券会社メリル・リンチは、特殊なニーズを持った富裕層として企業オーナーを捉え、彼らへのサービスを拡大するために、中小企業のキャッシュ・マネジメント、福利厚生サービス、貸付も手がけている。
2. 従来、中小企業向けサービスは貸付を中心に、密な人的交流を強みとする地域密着型の銀行が提供してきたが、近年は機械的に小口口座を管理する大手行の参入が著しい。これらの銀行に対し、メリル・リンチは先進的キャッシュ・マネジメントと、企業オーナーの個人資産運用を通じた長期的な人的交流を強みとしている。
3. 中小企業市場におけるメリル・リンチのシェアはわずかであるが、これを、上質の顧客のみをすくい取る戦略として、評価する向きもある。同社はより規模の大きい中堅企業向け貸付にも本格参入しつつあり、今後どれ程の存在感を示すことになるのかは未知数だが、中小企業市場の成長性が大きく期待できることだけは間違いなさそうである。
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