1. ストックホルム証券取引所の運営主体、スウェーデンのOMグループは2003年5月20日、ヘルシンキ証券取引所の運営主体であるフィンランドのHEXを買収する提案を公表した。このOMによる買収提案に基づいて設立される新会社OM HEXは、(1)ヘルシンキに本拠地を置くHEX統合市場、(2)ストックホルムに本拠地を置くOMテクノロジーの2部門で構成される予定である。なお、HEX統合市場が設立された後も、ストックホルム、ヘルシンキの各取引所のブランドを維持しながら、事実上統合された市場を目指す方針である。
2. OMグループは、2000年2月に個人投資家向けの汎欧州電子取引所ジャイウェイを創設したり、2000年8月にロンドン証券取引所(LSE)に対して敵対的買収提案を提示したりするなど、汎欧州証券取引所の設立に向けて果敢な取組みを行ってきた。しかしながら、OMは、LSEに対する買収提案が失敗したことに加えて、ジャイウエイも2003年1月31日に廃止せざるをえない状況に追い込まれるなど、これまでのところ上手くいっていない。
3. こうした状況を踏まえて、OMグループは最初から汎欧州証券取引所を目指すという野望を追求するのではなく、まずは汎北欧証券取引所を設立して、規模の拡大を図る、という現実路線を歩む決断をした。実際、OMは、北欧やバルト諸国の取引所や清算機関、中央証券保管振替機関などに対して、幅広く門戸を開放している。なお、LSE側も、北欧企業をロンドン市場に惹きつけることを目的とした動きを着実に進めている。
4. OMはまずは汎北欧証券取引所としての足場を固めたうえで、将来の汎欧州証券取引所の設立を目指す方針に変更したかに見える。もっとも、OMが目指そうとしている汎北欧証券取引所は、OMテクノロジーが開発した取引システムに依存していること、ストックホルム、ヘルシンキの各証券取引所の売買代金を足し合わせても、欧州第7位にとどまることなどから、OMによる汎欧州証券取引所設立が成功する可能性は、依然として高いとはいえない。
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