1. 2002年11月25日、米国証券取引委員会(SEC)は、2000年10月に施行された公平情報開示規則(レギュレーションFD)違反に問われた初めての事例を公表した。3件の行政手続きに基づく排除措置命令が出され、うち1件については、併せて民事訴訟も提起され民事制裁金の支払いを条件とする和解が成立した。これまで何が禁止されているのかがあいまいだと指摘されてきた同規則に関する違反事例が摘発されたことの意義は大きい。
2. 三つの事件では、(1)CEOが会社の業績に大きな影響を及ぼす重要な契約が締結されたという事実を漏らしたこと、(2)CEOが証券会社主催のコンファレンスで会社の業績見通しが従来考えていたよりもはるかに楽観的なものとなっているという事実を漏らしたこと、(3)CFOがアナリストの作成した業績見通しについて、見方が楽観的すぎるという趣旨のコメントをしたこと、がそれぞれ規則違反とされた。
3. これらの事例の分析から、次のことが推察される。(1)漏洩した情報の「重要性」判断においては、株価や市場参加者の行動に与えた影響の有無が考慮されている。(2)選択的な情報開示を防止するための体制がきちんと整備され、機能していたかどうかが、SECの判断に影響を与えている。(3)企業がそれまでに開示していた情報と漏洩した情報の質的な差違も影響を与えている。
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