1. わが国の企業経営者の間で、機関投資家の議決権行使に対する関心が高まっているが、日本株投資の歴史や投資残高などを考えた場合、イギリスを中心とする欧州の機関投資家も決して無視できない存在である。
2. イギリス・オランダの機関投資家は、90年代後半にかけて徐々に積極的に議決権を行使しはじめ、エンロン事件の影響などで姿勢をより積極化している。日本企業の議決権行使に関する取り組みには、まだ若干の格差があるとみられるが、ポートフォリオマネージャーに議決権行使の判断を任せる運用会社が多い一方で、一部ではコーポレートガバナンス専任の担当者・部署を設置していることは注目される。
3. 欧州のコーポレートガバナンスに関する潮流を米国と比較すると、(1)法規制によるフレームワーク樹立に腐心するよりは、ガイドラインを示して関係者の自主的な努力に期待するアプローチを好む、(2)株主と経営者の対話に重点を置く、などの傾向がある。米国のガバナンス・モデルの有効性に対して懐疑・批判が強まっている現在、日本企業にとっては、相対的に健全に推移しているように見える欧州のコーポレートガバナンス関連の議論も、参考になる点が多いと考えられる。
4. 日本企業としては、海外IR活動を行う際、ポートフォリオマネージャーに対する企業戦略の説明に加えて、いわゆる議決権行使IRとして、コーポレートガバナンスの担当者に対するディスカッションの機会を持つことが有効かもしれない。
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