1. わが国の銀行業界では巨大化と複雑化が進行している。巨大化はメガバンク同士で展開される合併劇に象徴される動き。複雑化とは伝統的な預金・貸出業を超え、証券仲介業や市場誘導型ビジネスまで業務が多様化している動きのことである。
2. 銀行の巨大化やコングロマリット化の効果については、諸説あるがそのメリットは定まっていない。巨大化やコングロマリット化するかどうかよりも、経営戦略のあり方が重要という議論もある。わが国の銀行は資産規模が大きい割に、時価総額が諸外国の銀行と比べて小さい。時価総額を拡大させるためには、合併以外にも様々な方策があることを示唆している。
3. また金融サービス業全体を見渡すと、全てが巨大化・複雑化に向かっているわけではない。ニッチ化、ブティック化の動きもある。
4.巨大化・複雑化がもたらすシステミックリスクの問題や、「大きすぎてつぶせない」という問題(TBTF問題)、競争政策上の課題にも留意が必要である。特にわが国は、諸外国に比べ、銀行の巨大化に対して競争政策上の牽制が厳しくない点に注意すべきである。
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