1. わが国の中小企業の重要課題の一つである事業承継問題については、相続税負担の軽減措置など税制面に偏った議論となりがちであり、また、相続・贈与といった個人的な問題の側面もあることなどからこれまで総合的な検討が行われてきたとは言いがたい。
2. こうした認識の下、中小企業における事業承継に係る問題を総点検し、有効な政策的手当てや民間事業者の取組みを検討すべく2004年12月より中小企業庁において「事業承継関連法制等研究会」が設置された。
3. 研究会では、先ず、わが国の中小企業の事業承継の実態を明らかにし、事業承継に関わる様々なリスクに対する認識の欠如や制度の問題点を整理してきた。これまでの議論で、事業承継に対する対策のあり方を検討する官民一体となった体制の構築は急務であり、実現に向け一層の検討を行い、必要に応じて具体的な政策的措置に取り組むという方向性が確認されたところである。
4. 中小企業は、新しいビジネスの創造、雇用創出などあらゆる面において経済社会の発展を支える重要な存在である。景気に明るさが見えてきたとはいえ、中国をはじめとする国際競争の激化に加え、経営者の高齢化など先行きに対する不安、将来の事業に対する懸念は益々高まってきている。
5. 金融機関はリテール戦略強化の中、事業承継問題をはじめとする中小企業向け金融サービス強化に向けた体制強化を指向している。先日、金融庁は「地域密着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム」を発表したところであるが、中小・地域金融機関は、地域中小企業に対するコミットメント強化策の一環として地域事情を踏まえ、事業承継問題を総合的に捉えた戦略構築が求められる。
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