資本市場クォータリー 2007年春号
家計資産選択と不動産
-地価反転局面入りがもたらす影響を地域特性から考える-
宮本 佐知子
要約
  1. 3月22日に発表された公示地価は、16年ぶりにプラスに転じた。経済全体で見ると、バブル崩壊後長く続いた「土地デフレ」の時代がようやく終わりを迎えたことになる。
  2. 地価の反転は家計の資産選択行動に大きな影響を与える可能性がある。家計のバランスシートを見ると、不動産関係比率は資産側でも負債側でも高く、家計が実際に資産を選択するにあたって不動産は無視できない存在だからである。そこで本稿では、実物資産を含めた家計資産全体を対象に都道府県別に分析し、「土地デフレ脱却」の下での家計の資産選択・リスクテイクについて検討した。
  3. 分析結果を基に、今回の地価反転が家計資産選択にもたらす影響を地域別に考えると、その影響は均一ではないと予想される。地域別地価の動きにばらつきがあることに加え、家計資産の地域特性が異なるため、仮に地価上昇率が同じであっても資産選択行動が同じとは限らないからである。更に、この地域特性が前回の地価上昇期である「バブル期」から変化している地域もあるため、家計が前回と同じような資産選択を行うとは限らない。
  4. そのため地価が上昇している都市圏の中でも、地価反転の影響は地域によって異なることが予想される。今後、金融機関にとっては、各地域の特性に合った戦略や商品開発がますます重要になろう。

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