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野村資本市場クォータリー
2007年 夏号
個人のリスクコントロールを考える上での視点
資本市場クォータリー 2007年夏号
個人のリスクコントロールを考える上での視点
-個人が抱えるリスクの増大と資本市場の役割-
宮本 佐知子
かつては主要先進国の社会では、個人が直面するリスクの多くは、政府や企業によって担われてきた。しかし、少子高齢化が進む中で、こうしたリスク分担の様相が変わり、政府や企業から個人へとリスク転嫁が進んでいる。具体例の一つとして、年金制度における確定給付型(DB)から確定拠出型(DC)への移行が挙げられる。
米国ではこうしたリスク転嫁が進む現状に対し、様々な議論がなされている。個人の場合、政府や企業に比べてリスクプーリング機能を持たず、規模の経済性も働かない。確定拠出型年金の加入者には、初期設定のまま資産配分を変えたことがない人が多く、また年金資産に限らず実際の個人資産のポートフォリオは総じて、ファイナンシャルプランナーのアドバイスとは異なるものである。
こうした状況を改善させるために、金融教育の必要性が指摘されることが多い。しかし米国では、資産管理プログラムの改善や税制等を含めた年金制度自体の改善、より有用でわかりやすく個人のニーズに合致した商品の提供が重要であるとの指摘も多く、これらの視点からの研究に基づく実践的な提案がなされている。
現在の個人の投資環境を巡る問題点は、個人向けの商品や資産運用アドバイスが発展途上にあることである。商品の品揃えが限定的で、個人のリスクコントロール上の様々なニーズに対応できる金融商品が不足している。そのため、最適なポートフォリオを実現することは難しい状況である。
また確定給付型年金のオルタナティブ投資が急増していることは、現時点では、リスクアロケーションのために有用な金融商品が、個人のみならず機関投資家においても不足していることを意味すると考えられる。このようなリスクコントロール上の穴を埋めるような金融商品の開発が求められており、このことは個人、機関投資家だけではなく、資本市場全体を発展させてゆく上でも重要であろう。
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