起きてしまったミンスキー・モーメント
金融危機を分析したミンスキーにちなみ、レバレッジの高まりや資産価格の高騰が続いた末、信用市場が崩壊し、急速な経済縮小が生じる転機をミンスキー・モーメントと呼ぶが、サブプライム問題が表面化した直後の2007年秋頃の段階では、その状況にはまだないとの指摘があった。銀行の資本は十分厚く、事業会社の手元現金も潤沢であると考えられていたからである。しかしリーマン・ショックを機に、明らかに世界経済は本格的な危機の領域に入ってしまった。
ミンスキーは、資本主義経済においては、安定的な状態が続く中で投機的経済主体、さらにはポンツィ的経済主体が拡大し、不安定性が増幅していくとした。歴史的な経済拡大が続いてきた過程で、実は世紀のポンツィ・スキーム(ねずみ講)が繰り広げられていたことが発覚したことは象徴的である。