今回の金融危機に関し、わが国では「デジャブ(既視感)」という言葉がよく聞かれた。わが国がかつて経験したバブル崩壊と金融危機、そしてその状況下で繰り出された様々な異例の措置等と似た状況が、海の向こうで展開されてきたからである。
危機が一段落した今日の欧米の状況も、かつてわが国が経験した状況に似た面がある。バランスシート調整が長引き、景気が容易に回復せず、デフレ的な状況が生じている点や、財政赤字の拡大などである。また、もう一つ金融機関への公的資金注入に対する国民の大きな反発が生じ、結果、公的救済が危機対応手法の選択肢から排除されてしまう点も同じである。
わが国においては、1996年、住宅金融専門会社の損失処理において、6850億円の公的資金が投入されたことが、国民の厳しい批判を呼んだ。この結果、その後、より大きな危機に直面する中でも、救済措置を含む危機対応策の機動的実行は、政策オプションとして長期間封印された。これは結果的に、より大きな国民負担につながったとされる。
今欧米は、住専問題後のわが国と同様、世論の反発を背景に、今後は金融機関の救済のために税金は決して投入しないことを大方針として、制度設計を進めつつある。