野村資本市場クォータリー 2011年春号
「個人」との関係強化を目指す「株主=顧客」戦略-サンタンデール銀行の事例-
宮本 佐知子
要約
  1. 人口が減少しているわが国において、「個人」を直接顧客とする企業が成長を目指す上では、従来通りの新規顧客開拓だけでなく、個人との関係強化が業界を問わずに重要課題となっているが、関係強化の一つの手段として「個人株主作り」が注目されてきている。その重要性については、金融危機後の国際的な規制強化と持合解消の潮流の中で、金融機関でも今後一層意識されてゆくと見られている。
  2. 本稿ではスペインのサンタンデール銀行の事例を取り上げ、同社の個人株主政策を検討する。同社はスペインの地方銀行から世界有数のリテールバンクへと飛躍を遂げた、株主数が最多の銀行であるが、株主政策を個人との関係作りと捉えて収益へ繋げることまで視野に入れており、入り口からその後の展開も含めて、わが国の金融機関にとって参考になると思われる。
  3. 「個人」は「株主」として大切であるだけでなく、「株主」・「顧客」の相互関係も大切であることに、わが国の金融機関は注目すべきであろう。実際、事業会社のみならず、金融機関の顧客データを用いた研究でも「株主」と「顧客」との間には強い相互関係が見出されている。
  4. 金融機関ならではの立場、つまり個人と頻繁に取引があることや、その資産の受託者でもあるという立場を考えると、金融機関が株主を顧客に・顧客を株主に迎えることは、個人との関係作りを進める中での自然な流れにあるように思われる。個人との関係作りを「株主」と「顧客」のどちらから始めるにしても、従来からの戦略に「株主=顧客」の観点を加えると、より強固な競争力あるビジネスモデルができるのではないか。

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