2010年12月、バーゼルIIIの規則文書が公表され、2013年から2019年にかけて段階的に導入される新たな国際的な銀行規制の詳細が明確となった。今後、自己資本規制が質・量共に強化される他、レバレッジ比率規制、流動性規制なども導入される。
バーゼルIIIに関しては、規制される側の民間金融機関から様々な批判が展開されてきた経緯がある。しかし、2011年年初に米国で開催された経済・金融学会において、当局者側からも、新規制に対する問題提起がなされたことは注目される。
発言の主は、バンク・オブ・イングランドの金融安定担当専務理事であるハルデイン氏。同氏は、英国の金融規制を回避するため、英国を離れる金融機関が出てきたとしても、金融危機がもたらすコストの大きさを考えると、それは英国として払うに値する代償であると言い切るなど、厳格な規制を求める強硬派のイメージがある。
しかし、今回の彼の問題提起は、バーゼルIIIの規制レベルでは生温い、といったことではなく、金融規制に必要な要件を十分満たしていない、という本質的な批判である。
すなわち、金融規制に必要な要件として、シンプルかつ透明であること、タイムリーであること、ロバスト(頑健)であることの3つが挙げられるが、バーゼルIIIはこのどれも満たしていないというのである。