野村資本市場クォータリー 2014年秋号
本格的に動き出す個人金融資産:相続に着目して
宮本 佐知子
要約
  1. 人口減少時代に入り、わが国の個人金融資産市場は大きな転換期にある。少子高齢化進展で「貯蓄する人」が減少し「貯蓄を取り崩す人」が増えることから、個人金融資産は伸びにくい構造にある。その中で既存の個人金融資産がどう動くのか、特に、相続による資産移転は非常に重要な問題であり、筆者は長年問題提起を続けてきた。
  2. 相続を通じた個人資産動向を考える上では政策面の動きにも注意を払うべきである。2013年に導入された教育資金に係る一括贈与の非課税措置や2015年からの相続税課税強化等の税制改正により、今後、将来の相続資産の一部が前倒しで動き出すと見られる。本稿ではこれら新しい政策面の動きも考慮しながら、改めて2020年までの展望を示している。
  3. 金融機関の経営戦略という観点からは、少子高齢化と人口減少の進行により個人資産市場の構造変化が着実に進んでいること、それに伴って金融機関のビジネスチャンスも変化していることが重要である。相続による資産移転の問題は、金融機関に対して、「世代」「地域」という視点を浮上させると同時に、「人口動態の変化にしっかり向き合う」というリテールビジネスの課題に丁寧に取り組む必要性を明確に突きつけている。

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