野村資本市場クォータリー 2014年秋号
地域教育資金形成制度
-米国529プランの発展に見る州政府発の知恵-
宮本 佐知子
要約
  1. 2014年5月、日本創成会議・人口減少問題検討分科会から「ストップ少子化・地方元気戦略」が公表された。今後、地方圏での人口減少は著しいと予想され、その危機的な状況にいかに対処していくべきか、そのための施策は何か、議論が急がれている。
  2. 1980年代の米国では、国の競争力低下への危機感から、産業競争力の強化だけでなく、教育の充実も求められていた。財政赤字が拡大する中で高騰する教育費問題に対処するため、家計の高等教育資金形成を支援する制度(529プラン)が、人口減少に悩む州政府発の打開策として、1986年に創設された。この新たな制度は、他州でも相次いで創設され、連邦税制上の優遇措置も認められたことを契機に、全米で利用される制度へと発展し、その後も普及に弾みがつき現在に至っている。その過程では、利便性向上や利用者拡大へ向けて工夫が凝らされてきた。
  3. 翻ってわが国では、これまでの少子化対策において、子育て費用のうち最も費用が嵩む教育費の議論が不足していた。米国でなされたこのような取り組みは、わが国の地方自治体でも、教育費に悩む子育て世代にアピールし、地域で人を育て人材の定着を図る一案として、検討に値するのではないか。

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