野村資本市場クォータリー 2014年夏号
注目されるNISA拡充へ向けた動き
宮本 佐知子
要約
  1. 2014年から開始されたNISAについて、拡充へ向けた議論が始まっている。政府内で固まりつつあると報道されたNISA拡充策は、NISAの非課税投資枠の拡大、非課税期間の延長、利用対象年齢の引き下げ、ジュニアNISAの導入である。そこで本稿では、わが国のNISAのモデルとなった英国のISAの概要や発展経緯を確認し、わが国の現状と併せて、これらNISA拡充策の意義やニーズを検討した。
  2. 英国のISAは、当初10年の時限措置として導入され、2008年から恒久化された制度であるが、導入時点での制度がそのまま維持されたのではなく、制度を見直し利便性を高める取り組みが重ねられてきた。また、ワークプレイスISAやジュニアISAといったISAの派生形が、更なる投資家層の拡大をもたらす好循環を生んでいる。
  3. このような英国ISAの発展経緯もあり、NISA拡充策はそれぞれ意義が大きく、NISAの普及を加速させ投資者層を拡大させるものと期待される。そもそも非課税投資枠の拡大や非課税期間の延長は、NISA開始前から個人投資家からの要望が多かったが、特に後者は制度が開始された現在でも各種調査で最も要望が多いものである。また、NISAの利用対象年齢を引き下げることは、特に職域を通じてNISAの利用者拡大を図る上で有用と考えられる。ジュニアNISAの導入と併せ、これらにより幅広い世代で投資者層の裾野拡大が進みやすくなると考えられる。
  4. ジュニアNISAの潜在的利用者規模は大きい。現在のNISA利用者は60歳以上世代に偏っているが、既利用者は子・孫のためにジュニアNISAも利用すると見込まれる。また、家計側のニーズを考えると、教育資金形成を目的に利用する家計も多いと見られるが、類似の仕組みを持つ商品の利用状況も潜在的利用者の目安となろう。
  5. 金融機関にとっても、これらのNISA拡充策は、マーケティング戦略上も有用であろう。既存顧客の高齢化が進む中で、次世代との取引関係を構築するためのツールとしても、大切な役割を果たすと考えられる。

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