金融システムの役割は「富の移転機能」に集約できる。富の移転機能は、異主体・異地点・異時点に関する価値の移転すべてを意味し、(決済機能のように)原則として富に中立的な場合と、「富の増価」を伴う場合がある。
歴史的に見ると、富の移転は、その目的が(決済等の)「便宜(利便性)の向上」から「富の増価」にウエイトが移り、金融イノベーションは価値の増殖との関係を強めるようになる。便宜の向上に関するイノベーションは洗練・定着し、金融システムを効率化させたが、富の増価に関するイノベーションは、金融ビジネスを膨張させ、金融システムの不安定化を増幅している。