野村資本市場クォータリー 2015年夏号
注目集まる相続資産市場と金融機関の取組み
宮本 佐知子
要約
  1. 高齢化社会と平行して、相続資産市場の重要性はますます高まっており、足下の相続資産市場の規模は50兆円強と推計される。今後も相続資産市場は拡大が続き、2030年までの相続資産額は控えめに見積もっても1000兆円規模になると推計される。わが国では、大相続時代が到来している。
  2. 2015年から相続税制が改正されたことも、相続への注目や関心が高まっている要因である。相続税の課税ベースの拡大と税率構造の見直しが柱であり、2015年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用されている。今後はこの相続税制改正の影響が顕在化することや、相続税制の方向性、人口動態に伴う相続件数増加により、相続税の課税対象となる人や自分も対象になるかもしれないと考える人が増えて行くと予想される。
  3. 相続税の課税状況は地域によって異なる。国税局別の統計を基に詳細な地域別課税状況を算出すると、都道府県ごとだけでなく、同一都道府県内でも地域ごとに大きな差が生じており、全国平均を上回る地域を含む都道府県は25にのぼる。これらの地域においては特に、相続税改正の影響が広く見られ相続への注目や関心もますます高まることになろう。
  4. 相続資産市場の拡大が見込まれる中で、従来よりこの分野に強い信託銀行だけではなく、メガバンクや地域金融機関でも相続資産の獲得に取り組む価値は高いと思われる。そこで、これらの金融機関がどのように取り組んでいるか、実際に各社ホームページを調査しその結果をまとめた。相続資産獲得を狙う金融機関において「どのように個人顧客にアピールしていくのか」は、重要な戦略のはずである。ホームページは顧客との取引の入口に当たることから、ターゲット顧客にとって利用しやすく作ることが望ましいと考えられ、この観点だけからも各金融機関が検討・工夫できることは多そうである。

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