野村資本市場クォータリー 2015年冬号
個人金融資産動向:2014年からの潮流
宮本 佐知子、荒井 友里恵
要約
  1. 2014年は株高・円安が進んだ年であり、年初からNISAという新たな制度が開始されたこともあって、2013年に続き個人資金の動きが活発な1年となった。2014年末に公表された日本銀行統計によれば、2014年9月末の個人金融資産残高は1,653兆6,447億円(前期比0.5%、前年比2.7%)に達した。一方、現金・預金は前年比1.7%増、個人金融資産に占める割合は52.6%と、依然として過半を占める。
  2. 2014年7~9月期までの各金融資産への個人資金の純流出入は次の通りである。第一に、預金は、四半期ごとの変動が大きいものの、流動性預金への選好が続いた。第二に、債券からは資金純流出が続き、国債から23期連続で資金が純流出した。第三に、上場株式からは2期連続で資金純流出、投資信託へは10期連続で資金純流入となった。第四に、対外証券投資へは2期連続で資金純流入、外貨預金からは2期連続で資金純流出となった。
  3. このように2014年は、前年からの株価上昇効果や、投資信託を中心に個人資金の流入が続いたことにより、個人金融資産残高は過去最高値の更新が続いた。投資信託への資金流入が続いた要因としては、第一に、NISAが開始されたこと、第二に、ラップ口座が増加していること、が挙げられる。今後の注目点は、個人が保有するリスク資産の割合(2014年9月末時点で14.6%)である。実質金利がマイナスの局面においては、資産選択の見直しも検討されてこよう。投資機会を窺う個人資金は多く待機しており、さらに今後は資産選択行動に影響しそうな制度改正も多く行われる。
  4. 2015年1月14日、「平成27年度税制改正の大綱」が閣議決定された。本稿では、家計に係る具体的な項目として、ジュニアNISAの創設、NISAの投資上限額引上げ、教育資金の一括贈与に係る非課税措置の延長・拡充に注目し、ジュニアNISAや職場積立NISAの概要、NISAや教育資金贈与信託の利用状況等、それらを取り巻く環境について概観した。
  5. 総じて、今回の制度改正では、家計の安定的な資産形成を支援するとともに経済成長に必要な成長資金の供給を拡大することや、高齢者から若年層への資産の早期移転を通じて少子高齢化の進展・人口減少へ対応することが意図されている。これまでの政策の潮流を更に推し進める内容であり、今後も政策動向が及ぼす家計への影響には注目すべきであろう。

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