野村資本市場クォータリー 2016年夏号
近年の相続をめぐる新たな潮流
-相続税統計と相続事情から見出せる変化-
宮本 佐知子
要約
  1. 経済が成熟し高齢化が進む日本では、「相続」は個々の家計における資産蓄積や家計全体の資産分布に影響を及ぼす重要なテーマである。継続的に分析してきたように、高齢化社会の進行と平行して相続に関わる人が増加しており、年間50兆円強の資産が世代間で移転する相続資産市場は拡大が続く見通しである。加えて、相続税が2015年から改正されたことや、2016年7月に公表された路線価が8年ぶりに上昇に転じたこともあり、相続への関心も改めて高まっている。
  2. 相続財産に関する近年の新たな潮流が幾つかあるが、この潮流のうち特に注目されるのは、資産格差や地域格差の拡大が進んでいることである。さらに、相続全般に視野を広げると、近年は個々人の遺産に対する考え方や、財産ポートフォリオなど相続事情にも、変化が見られていることも指摘できる。
  3. 金融機関においては、このような変化や特性を踏まえて、顧客のセグメント化や、どのセグメントにどのような戦術を展開するのか、マーケティングの方法を検討していくことが大切になると考えられる。そして、今後を展望すると、高齢世代ほど多額の資産を持つ人の割合が多いことや、被相続人1人当たりの相続人数は減少すると見込まれることから、相続が及ぼす家計資産への影響や金融機関ビジネスへの影響は、更に大きくなると見込まれる。

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