家計の金融資産を、低リスク・低リターンの預貯金中心から株式・投資信託等の高リターン・高リスク資産も含むポートフォリオ構成に転換することは、日本の金融業界にとって長年にわたる関心事項であり続けている。
議論の出発点として、日本の家計における証券投資行動の現状を整理しよう。
金融庁の『平成27事務年度金融レポート』によると、日本の家計が持つ金融資産における株式・投資信託の比率(年金・保険等を通じた間接保有を含む)は18.8%であり、米国の45.4%を大きく下回る。また、日本証券業協会が行った平成27年度『証券投資に関する全国調査』(以下、『全国調査』)によると、株式・投資信託等の危険資産を保有している家計は1割程度であり、米国の家計における24%(Panel Study of Income Dynamics、2009年)に比べてかなり低い。これらのデータからは、日本の家計における証券投資行動の特徴として、(1)危険資産の保有を行っていない家計が非常に多いこと、(2)危険資産を有する家計にあってもその保有比率はかなり低いこと、の2点が指摘できる。過去20年近くにわたって、「貯蓄から投資へ」のスローガンのもと、金融当局および金融業界が一丸となって株式・投資信託への投資促進をすすめてきたにもかかわらず、である。
以下では、日本の家計の証券投資行動における上記2つの特徴の原因および転換の方策について考察してみたい。