野村資本市場研究所｜金融業の更なる開放を目指す中国の新外資政策の公表

2017年1月17日、中国国務院（内閣）は、「対外開放を拡大し外資の積極的利用に向けた若干の措置に関する通知」（以下、通知）を公表した。この新外資政策では、対外開放の更なる拡大が目玉の一つであり、サービス業への外資参入規制の緩和では、銀行・証券等の金融業を重点分野としていることが特徴である。
中国の外資導入政策は、国家発展改革委員会と商務部が制定する「外商投資産業指導目録」に基づいて行われており、金融業は制限類（出資比率やライセンスに規制）となっている。また、同じ制限類でも、金融業の業種によって異なる外資参入規制が敷かれている。証券業の場合は、最大で49％の外資出資比率及びライセンスの制限が課されている。
一方、香港資本の合弁証券会社の設立には、中国本土と香港間の経済貿易緊密化協定（CEPA）の枠組みの下で、中央レベルや自由貿易試験区（FTZ）での外資規制とは異なる優遇制度があり、上海市、広東省、深市で設立する「地域限定型」と国務院が指定した金融改革試験区で設立する「金融改革試験区型」とがある。
外資の金融業への進出規制の緩和には、2016年に顕在化したクロスボーダー人民元決済金額の減少や、中国金融機関への対内直接投資の減少がある。同時に、これまで、先進国政府との経済対話で、金融業への更なる市場開放の要請がなされてきた経緯もある。
新外資政策の下での金融業の外資進出規制の緩和は、中国政府として、先ずは上海FTZで実験を行い、金融市場や金融機関にもたらすリスクを評価した上で、全国に展開する方針である。証券業では、外資出資の上限規制等、過去に上海FTZで打ち出したルールと、今回の新外資政策との政策の整合性が注視される。