日本における従業員持株会制度は、上場企業の95%程度が導入していると見られるが、株式市場におけるプレゼンスはそれほど高くない。従業員持株会の保有分が発行済株式数に占める保有比率は現在、平均で2%程度であり、フランスの従業員持株制度を通じた平均保有比率(約4%)の半分である。また、推定対象従業員に対する参加比率も5割を大きく下回る企業が大部分である。従業員の積み立てに加算する形で企業が供与する奨励金も積立額の5%という企業が最も多く、20%を超える奨励金を提示する企業は1%にも満たない。
日本における従業員持株会制度の位置づけは、表向きは従業員の福利厚生という側面が強調されつつも、実際には安定株主層形成という目的が重要視されてきた。インセンティブ制度として捉えられる傾向が強い欧米の従業員持株制度と違い、研究の蓄積も少ない。従業員持株会制度は、生産性や企業業績にどういう影響を与えているのだろうか。