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2018年 春号
2030年の家計金融資産の姿
野村資本市場クォータリー 2018年春号
2030年の家計金融資産の姿
-年齢階層別・地域別の展望と示唆-
宮本 佐知子
わが国の金融機関を取り巻く環境は、ここ数年で急速に変わってきた。例えば、マイナス金利の導入、グローバル金融規制の強化、AIやフィンテックの台頭と新業態の参入、そして人口減少などが挙げられる。中でもわが国の総人口は、長期の人口減少過程に入っており、高齢化率の上昇も続いていくと見込まれている。また、人口を地域別に比べると、人口減少や高齢化の水準・スピードには大きな差が生じることも見込まれている。
本稿の目的は、2030年のわが国の人口構成を基にした家計金融資産の姿について、年齢別や地域別という観点からさらに深堀りすることである。そこで本稿ではまず、足元の人口と家計金融資産について、年齢階層別構成及び地域別構成をそれぞれ確認した。次に、2030年の人口の年齢階層別構成及び地域別構成を示した上で、それを基に2030年の家計金融資産の年齢階層別構成及び地域別構成がどうなるのかを分析した。
分析の結果、人口の高齢化のスピード以上に家計金融資産の高齢化が進んでいき、また、地域別に見ても、人口の高齢化と偏在化のスピード以上に家計金融資産の偏在化が進んでいくとの結論が得られた。
金融機関が家計金融資産にアプローチするためには、このような変化を見据えた戦略をとることが、今後はますます大切になる。とりわけ金融機関にとって重要なことは、人口の減少と高齢化がもたらす様々な課題に対して単なる対処策を講じるだけではなく、これを機会と捉えていかに時代に合った業態へと柔軟に対応することが出来るかである。模倣できる前例がない中で、人口の減少と高齢化に対する取り組みをいかに発展させていくことが出来るのか。今後の金融機関の動きが注目されよう。
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