金融・証券規制

私募証券投資の更なる活性化を目指す米国の取り組み
-自衛力認定投資家の規制緩和を中心に-

岡田 功太

要約

  1. 近年、米国では、私募証券投資の活性化策が注目を集めている。証券取引委員会(SEC)は、非上場株式や私募ファンド等の投資機会の拡大を目的として、自衛力認定投資家の定義の修正に係る規則改正案(以下、SEC規則改正案)を公表している。
  2. 自衛力認定投資家とは、私募証券に投資可能な者であり、銀行、保険会社、投資会社といった金融機関等の法人と、純資産及び所得実績が一定水準以上の個人に分類される。SEC規則改正案は、上記定義のうち、個人に関しては認定教育機関から資格を得た個人等を追加し、法人に関してはファミリーオフィス等を追加することなどを提案している。
  3. SEC規則改正案に対し、非上場株式取引プラットフォームの運営者から前向きな評価が寄せられる一方で、北米証券監督者協会及び全米消費者協会は、情報開示の強化を伴わずに自衛力認定投資家の定義を拡大した場合に、私募証券投資を巡る詐欺や不正行為が増加する可能性があるなどとして、同規則改正案に反対している。
  4. 米国の資産運用業界は、SECに対して、既に自衛力認定投資家に分類されている1940年投資会社法の登録投資会社に係る規制緩和についても、同時に議論すべきであるとしている。クローズド・エンド・ファンド及びインターバル・ファンドに係る規制緩和や、関係者に当たる登録投資会社間の私募証券取引に係る規制緩和を図ることで、私募証券投資の活性化が実現できるという主張である。
  5. 米国の議論を参照しつつ、日本においても、非上場企業への円滑なリスクマネーの供給及び投資家にとっての投資機会の拡張という観点から、特定投資家の定義の見直し、非上場株式取引プラットフォームの運営者の新規参入の促進、上場ファンド市場の活性化等を検討し、私募証券投資を行う環境の整備を図る必要があると言えよう。